【勾配70%】箱根・湯河原 坂巡り【箱根には魔物が潜んでいる】

就職活動が一段落し、その日私は横浜のホテルにいた。

横浜といえば神奈川県の県庁所在地である。私はかねてより神奈川に行きたい場所があった。ひとつは目は箱根湯本の温泉街にある坂道、そしてもうひとつは湯河原の勾配70%越えの激坂だ。真相を突き止めるべく、東海道線に乗り込み西へ向かった。

 

捕捉:

後から知った事だが、湯河原という地名は神奈川県と静岡県に跨がるものらしく、その坂は静岡県側であることが判明した。「湯河原町」という自治体が神奈川県にあるので勘違いしていた。静岡県の皆さんには何とお詫びしていいか分からない。言い訳をさせてもらうと、本当に「えっ…ここ!?」というところに県境があるのだ。GoogleMapとかで確認してもらえると分かって貰えるだろう。とてもあれが関東地方と中部地方の境界とは思えない。

 

AM9:00に横浜駅を出発。小田原駅の手前、二宮という駅で電車を降り、車で箱根へ向かう。箱根湯本に凄い坂があると聞いたので、国道1号に沿って箱根路を走る。駅伝でいえば、ちょうど5区の区間だろうか。新道と分岐した辺りから徐々に上りの勾配が現れ始める。

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休日であったことも重なり、箱根湯本には多くの観光客が訪れていた。恐らく大多数は温泉目当てで、坂道を見に来た者は少数だろう。例の坂道は、箱根湯本駅ペデストリアンデッキから一望できる。箱根登山鉄道と道路が織り成す曲線美は、私の当初の想像を良い意味で裏切ってくれた。

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今度は下から歩いて上ってみる。箱根登山鉄道の桁下越しに勾配標識が見える構図になっている。この坂道は箱根湯寮という日帰り温泉に至る通路だ。車両は上り・下りとも通行可能で、歩道はない。

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歩いて1往復したあとは、車に乗ってもう1往復。観光地で人通りも多くバスも走っているので、注意しながら車を走らせる。勾配標識は下り側にも設置されている。

箱根湯本を後にし、国道1号に沿って更に山を登る。駅伝のコースであるためか、ランナーやロードバイクが多く、運転には細心の注意が必要である。事実、駅伝区間を走破した私は疲れてしまい、箱根峠の道の駅で1時間ほど眠ってしまった。それにしても箱根駅伝の5区は本当に起伏が激しく、「登山」という言葉が最もふさわしいと実際に走ってみて感じた。この区間を駅伝のコースに設定した人は相当なサディストなのではないだろうか。

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芦ノ湖を望む道の駅「箱根峠」でお土産を買い、静岡県三島市の「三島スカイウォーク」に寄り道する。箱根峠が県境になっており、そこから十数分で三島スカイウォークに到着する。写真は撮っていないが、中々の絶景コースだ。

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三島スカイウォークは日本一長い歩行者専用吊り橋である。2015年にオープンしたばかりで、天気の良い日には富士山も見えるらしい。しかしこの吊り橋、歩行者専用と銘打っているが、実態はカップル専用である。どうやら吊り橋効果というものがあり、一緒に吊り橋を渡ると相手のことを好きになるらしい。あいにく私は1人で行ってしまったため、この橋を渡れば自分自身のことを好きになってしまう。というのはまあ冗談だが、周りを見渡しても1人でいる人の姿は見つからない。橋の手前まで行って踵を返す。どうやら私は来る場所を間違えたようだ。帰り道では向日葵が涼しげな花粉を放っていた。

カップルの巣窟を後にし、本命の湯河原へ向かう。湯河原パークウェイというとんでもない有料道路を通って、15:00ごろ湯河原温泉観光温泉協会の駐車場に到着した。私に与えられた時間は約1時間半。つまり単純に往復することを考えれば、これから45分ほどで例の激坂を見つけなければならない。

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以前読んだブログの言葉を借りると、湯河原という街はクソ坂の宝庫である。はじめに断っておくが、与えられた1時間半という短い時間では、湯河原の持つ魅力の全てを引き出すことはできなかった。時間があれば再び、今度は泊まりがけで行きたいとさえ思った。それほどまでにこの町はとてつもないポテンシャルを秘めている。

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持ち得る情報をもとにその場所を目指す。岩戸山と書かれた案内板を見つけた。情報と同じだ。確実にその場所は近づいている。早足で歩いて30分ほど経った。温泉街からはだいぶ離れてしまった。その間ずっと上り続け、運動不足の足が悲鳴をあげている。左足の靴擦れが疼く。だが、今はそんな事はどうでもいい。その場所が近づくにつれ、呼吸が荒くなり、胸が高揚する。斜度25%を超える100mほどの直線の先に、その場所はあった。

 

 

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お分かりいただけるだろうか。この角度を。この圧巻の迫力を。

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これまで数多くの激坂を登ってきた(つもりだ)が、勾配でいえばこの坂は断トツである。勾配計というアプリで測ってみたが、カーブ内側は本当に70%あった。こんな数字は見たことがない。下から見たら壁、上から見たら崖である。

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驚くべきはこの道、車止めが設けられていない。すなわち、れっきとした「車道」なのである。内側は確かに70%あるのだが、同じ高低差をより長い道のりをかけて上る外側は勾配20%程度であり、車でもなんとか上ることができる。実際、カーブを曲がった先の道路にはガードレールが設置されており、路面にも車が走った痕跡がある。私も車で行ってみようか迷ったのだが、もしあの坂を上りきれなかったら...対向車が来たら...などとチキンなことを考えて、車でのアタックは諦めてしまった。他の人にも車での巡行はおすすめできない。というか、アクセル音が近隣住民の迷惑になると思うので、部外者は極力車で走行するべきではないと思う。徒歩やロードバイクでこの場所を目指す人のために、念のため狭い範囲の地図を載せておく。

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どうしても行きたい人は、これから頑張って特定してみることだ。

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山を降り、万葉公園というところで滝を見てきた。小さいトンネルの先に滝が見える構図で、吸い込まれるようにトンネルをくぐった。こんなの気になるに決まっている。

帰り道は神奈川県道732号「旧東海道」を通って帰路についた。箱根七曲りという面白い道路があるのだが、後続車両が詰まっていたのでそそくさと下った。この辺の道路はカーブが多く、1車線が若干狭いうえに歩行者が多いので運転には相当気を遣ったが、地元の人はこれが普通なのか、たいしたことはないようだ。

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オチが思いつかないので、道中見つけた非常に気になる看板と、棄てられた道路標識の写真を載せて結びとする。今回も何とか無事に旅を終えることができた。