竜飛崎・階段国道の冬季到達可能性に関する検証(往路)
定休日[1]・モンスター[1]・女王[1]
[1] 非公認団体 移動プロジェクト研究会
ABSTRACT
「竜飛崎」および「階段国道」は青森県を代表する観光名所の一つである.しかし,その冬季におけるアクセスの難易度についてはこれまであまり検証されてこなかった.歌曲「津軽海峡冬景色」にも代表されるように,竜飛崎の醍醐味は冬にこそ発揮されると考えられる.本記事では3名の協力のもと,仙台から竜飛崎への冬季のアクセシビリティについて,実際に現地に足を運ぶことにより検証する.検証の結果,高度な運転技術と精神力を有する同伴者がいれば,冬季の到達も可能であることが示された.加えて,階段国道は冬季閉鎖されていることが明らかになった.
検証条件と使用経路
検証は2018年2月23日に行った.当日は早朝3時に仙台を出発する.東北自動車道を北上し,北上JCTから秋田自動車道に突入する.五城目八郎潟ICで高速を降り,八郎潟,大潟村に立ち寄る.その後,主に一般国道101号を利用して竜飛崎へ向かう.事前調査により,国道339号の小泊~竜飛間(竜泊ライン)は冬季全面通行止であることが分かっていたため,十三湖の付近で青森県道12号→同14号と迂回し,今別町から国道280号を経由して竜飛に向かう.
途中の立寄地は以下のとおりである.
錦秋湖SA(西和賀町),八郎潟干拓地(八郎潟町),大潟富士・経緯度交会点(大潟村),鹿の浦展望所(八峰町),猿神鼻洞門・大岩海岸(深浦町),海の駅わんど(鯵ヶ沢町),奥津軽いまべつ駅・青函トンネル入口(今別町).
検証者
検証は以下の3名で行うものとする.
- 定休日
本記事の主著者.主に坂道等の酷道を好むが,実際に行ってみると怖気づくことが多い小心者.早朝3時出発と言った張本人ながら,出発直前まで徹夜で論文を執筆しており,当日のコンディションは最悪とする.
-
モンスター
モンスターエナジーをこよなく愛するモンスター.運転技術とフットワークに定評があり,かつて秋田~広島間を一般道で走破したことがある.テニス部で鍛えたモンスター並の筋力で,あらゆる問題を解決する.
-
女王
弊研究グループを裏で牛耳る女王.旅行の行き先は彼女の一声で決まることが多い.旅先で「帰りたい」と思ったことが無いらしく,全ての制約を外せば無限に旅をし続けるらしいので,同行には注意が必要.
検証過程と結果
1日の総走行距離が500km以上に及ぶため,検証の過程を「(1) 仙台~大潟村」「(2) 大潟村~深浦町」「(3) 深浦町~今別町」「(4) 今別町~竜飛崎」の4つに区分する.
(1) 仙台~大潟村
早朝の東北道(下り)は交通量も少なく,全区間2車線なのでスムーズに走ることができる.秋田道に入っても交通量が少ないのは相変わらずだが,片側1車線区間が長く,トラックや除雪車がいると速度を落とさざるを得ない.そして何より,東北道と秋田道では積雪の量が桁違いである.出発した我々をまず待ち受けていたのは,秋田道・錦秋湖サービスエリアの豪雪だった.
高いところで4mにもなろうかという積雪.
この日は青森まで行った訳だが,積雪深だけでいえば此処が最も高かったのではないだろうか.天気が良かったのが唯一の救いである.
錦秋湖SAを後にし,さらに秋田道を進む.
高速道路で拝む日の出.
八郎潟の湖上には雪が積もり,一面の銀世界が広がっていた.
雪の上にはまだ誰の足跡もない.どうやらこの冬はじめて湖の上に立ったのは我々のようだ.
氷が割れないように慎重に歩を進めるモンスター.
3人乗っても氷はビクともしない.かなり深くまで湖が凍っているようだ.
雪原を支配する女王.
その後,大潟村で日本一低い山「大潟富士」や,経緯度交会点を見学する.
大潟富士(標高0m).周辺の土地は海水面より低い.
北緯40度線と東経140度線が交わる場所.
「地上に現れた地球の十字路」
大潟村は人口的に造られた村なこともあり,観光資源はさほど豊かではないが,地理好きな人はそこそこ楽しめるんじゃないかと思う.電車が通っていないので,車が必要なことは言うまでもない.
大潟村を後にした我々は,国道101号を日本海に沿って北上する.
五能線と並走する能代~鯵ヶ沢間(大間越街道)は絶好のドライブコースである.西に日本海を臨むオーシャンビュー街道でありながら,東には世界遺産・白神山地や青池で有名な十二湖など,寄り道するには事欠かない.
だが,あいにく我々には時間がない.この季節の日没を考えると,午後4時頃には竜飛崎に到着したい.大潟村を出たのは午前9時過ぎ,すでに太陽は天高く昇っている.冬の旅行はいつも時間との戦いだ.限られた時間の中で目的地に辿り着くためには,時に悲しい決断も必要だ.我々は断腸の思いで白神山地をスルーした.
・・・まあ,最初から白神山地は旅程に入っていなかった訳ですが.
そもそも,我々の旅行は行き当たりばったりなところがある.最終目的地に辿り着くことだけが旅の目的ではない.そこに至る過程,目に映ったもの,感じたもの.地図を見ながら「次はどこに行こうか」と考えること.その全てを楽しむことが旅の目的であり,「移動は本来需要」という言葉を生み出した弊研究グループの教示であり矜持なのである.
語りが長くなったが,とりあえず今回は白神山地への寄り道は見送り,国道に比較的近い場所を探索した.
八峰町の鹿の浦展望所.
深浦町の猿神鼻洞門.
そして大岩.この大岩は特に凄かった.
まず,海がとてつもなく綺麗.
岩に向かってコンクリートの道が整備されている.
階段(作画崩壊).どういう意図で設置されているのかは分からなかった.
この大きな岩の頂上まで歩いて行ける.
手摺りこそ設置されているが,奥側に落ちれば命は無いだろう.時折突風が吹き,足がすくむ.
崖から先を眺めるモンスターと女王.筆者は高所恐怖症なのでそこまでは行けない.
そんな感じで大間越街道は見どころ満載のコースである.そして深浦町はかなり長い.
(3) 深浦町~今別町
深浦町を後にし,さらに北へ向かう一行.
途中,なんか凄い滝(氷柱?)を発見.
鯵ヶ沢町でヒラメ丼をいただく.時刻は午後1時.
そして旅はいよいよ佳境へ突入する.
正直,筆者はこの辺の記憶がほとんどない.前日徹夜したツケが一気に襲い掛かり,後部座席で爆睡していた.どの経路を通ったのかもよく覚えていない.
ただ,目が覚めるとそこは雪国であった.
青森県道12号「やまなみライン」.
そして同14号.以前筆者が道を間違え,辿り着けなかった場所だ.後輩たちが筆者の無念を晴らしてくれた.感無量である.
そんなこんなで到着した,山中に突如として現れる巨大な建造物.
ここが北の大都会,IMABETSUである.
Slow Travel is Busy.
ふと時刻表を見ると,15:35 発.そして現在の時刻は15時.上りの新幹線が迫ってきていた.
そこで我々は急遽,青函トンネル入口広場に向かった.奥津軽いまべつ駅から青函トンネル入口広場までは,ものの十数分で到着した.
青函トンネル本州側入口.広場には展望台が設置されており,そこから列車を撮影することができる.
そして待つこと約10分.けたたましい警報音が鳴り響く.新幹線がやって来た.
撮影成功.
1日7本しかない上り列車を丁度良いタイミングで拝むことができたのは,幸運以外の何物でもない.
(4) 今別町~竜飛崎
いよいよ最終目的地「竜飛崎」そして「階段国道」へ向かう.
ここから竜飛までは,国道339号で1本である.だがこの国道339号,冬季は路面状況が悪く,運転にはかなりの技術を要する.
除雪が降雪に追いつかず,片側一車線道路に轍が3本しかないので,対向車が来ると詰む.この辺の集落の人は大変だ.
そして16時10分,遂に竜飛崎に到着.
天候は最悪である.
「津軽海峡冬景色」歌謡碑.このボタンを押すことが夢だった女王,歓喜.
津軽海峡冬景色を熱唱する筆者ら.この季節に竜飛崎に来るのは我々くらいのようで周囲に人の気配はなく,思う存分熱唱することができた.
天気の良い日はここから北海道が見えるらしい.
そして階段国道はというと,
冬季閉鎖されていた...
まあこれも事前調査で分かってはいたのだが,旅程を組んでしまった以上引き返すわけにはいかなかった.我々の身体に後退(バック)のギアは付いていないのだ.
下から見てもやっぱり冬季閉鎖.
だが,心なしか天気は回復してきたようだ.
今回は「階段村道」で我慢することにする.
そんなわけで,何とか日没までに目的地に辿り着くことができた.
帰りは同じ道を引き返し,今度は国道280号を陸奥湾に沿って南下する.この日は青森市内のホテルに宿泊することになっている.
流石にもう海は見えない.
青森市内のラーメン屋で「しじみらーめん」をいただく.疲れた体に温かいスープが沁みる.
完食.
無事ホテルに到着し,我々は竜飛崎への旅(往路)の過程を終了した.
本検証の結論として,早朝3時に仙台を出発すれば日没までに竜飛崎に到達できる.ただし階段国道は冬季閉鎖されている,という知見が得られた.
復路の検証については,今後の課題とさせていただきたい.
(2018年3月11日 追記)
復路の記事を投稿しました。↓↓
竜飛崎・階段国道の冬季到達可能性に関する検証(復路) - お休み処 定休日